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弁護士が伝えておきたい「ベンチャー企業を取り巻く労務リスクとは」

本記事は弁護士法人Next 倉持弁護士のご協力・監修により掲載しております。

後回しにされている現状

ベンチャー企業経営者の皆さん、もし皆さんが喫緊の経営課題を問われた場合には何を真っ先にあげるでしょうか。

ベンチャー企業経営者の方々の多くは優先課題として資金調達や営業、商品開発や販路開拓といったテーマをあげますが、「労務管理」をあげる方はほとんどいないのが現状です。

その理由を尋ねてみると「まだ社員がいないので関係ない」、あるいは「創業したてで今は内部管理より攻めることが大切」等、早急に取り組むべきテーマではないとの認識が根強いことが伺えますが、例えば社員があまりいないからといって労務管理への取組みを後回しにして本当に大丈夫なのでしょうか。

IPOを目指すなら?訴えられた際のリスク

万が一、従業員に訴えられるとIPOの阻害要因となり得る

仮に社員を一人採用したばかりという場合でも、雇用したその時点から労務に関する法律が経営者の皆さんに課せられることになります。

ベンチャーだから、創業間もないからといった言い訳は法律上通用しません。

例えば資金繰りが厳しかったからといって賃金や社会保険料の未払いが生じれば、社員が1人でも労働紛争により訴えられる場合はあります。

その結果、付加金や損害賠償金の支払いといった大きな費用的ペナルティーが課せられる可能性があるのです。

また、リスクは費用負担に留まりません。労働紛争次第では業務停止命令や企業名公表といった厳しい行政処分を下されることもあり、そうなれば事業がストップしてしまう他、ネットの書き込み等により「ブラック企業」といった噂が拡散することだってあり得ます。

そうした事態に陥ってしまえば、IPOによる資金調達というベンチャー企業飛躍のための大きなチャンスも失ってしまうことになりかねません。

実際に起きた労働紛争の紹介

では、実際に起きたベンチャー企業での労働紛争の事例を紹介しましょう。

ベンチャー企業で実際に起きた労働紛争の事例
<未払い残業代によるトラブル>

あるベンチャー企業が人件費を抑制する目的で、40時間の固定残業代を設定し、その結果基本給を減らす就業規則変更を行ったところ従業員の不満が爆発し、労働紛争へと発展してしまいました。

この問題の背景には、就業規則上で基本給と残業代を明確に分けずに、「月給」として記載していたこと、及び、就業規則を変更した結果、労働者にとって労働条件の不利益な変更になったにも関わらず、労働契約法上要求される代替措置をとる等の合理的措置がなされず、加えて、労働組合がある場合は組合の、組合が存在しない場合は事業場の過半数代表の意見を聴取すべきところ、この手続の履践において会社側の利益のみに基づき、従業員のコンセンサスを得ることなく強引に変更をしたために、会社側と従業員との間の信頼関係が壊れてしまったこと等が大きな要因としてあげられます。

その結果、未払い残業代として試算された額は2億円にも達し、その企業は和解金として約8千万円もの支払いを余儀なくされました。

<退職勧奨によるトラブル>

人手不足からあわてて従業員を採用したベンチャー企業のケースです。無事に従業員を雇用でき、胸を撫で下ろしたのも束の間、その従業員はミスの回数が多いことに気付きました。そしてミスの改善に消極的な上、挨拶も行わない等パフォーマンスに問題が見られたため繰り返し指導を行いましたが、それでも改善が見られませんでした。ベンチャー起業は少数精鋭のメンバーで事業を回さねばならないため、経営陣はこの問題を看過できませんでした。

そこで退職勧奨から通常解雇を行ったところ、その従業員より労働審判が申立てられました。 というのも、従業員に対する適切な評価と、それに基づいた適切な指導が行われ、また、配置転換や、戒告等を重ねるといった「解雇回避」のための努力がなされていない場合、解雇は、心情や実態がどうであれ「違法」として扱われてしまうのです。結果、その対応には経営に深刻な影響が及ぶほどの時間と費用を費やさざるを得なくなってしまいました。

まとめ

ベンチャー企業経営者の方は労務管理をあまり重視しませんが、ご紹介したとおり、労務管理を怠ればベンチャー企業であっても大変大きなコスト負担や信用毀損といった代償を支払わなければならなくなります。

また、「もう少し大きくなったら体制を整えればいいや」という考え方も危険です。なぜなら、起業当初の「風土」はそう簡単には変わらないからです。

何年も走ってから、基盤ができあがってからの体質改善は、並大抵の大変さではありません。私達の体やダイエットを考えてもご理解いただけるのではないでしょうか。日々のエクササイズのように、日常業務における法務(労務管理等)をどれだけ法的にクリアにするかということが、大事なのです。 自社の未来への投資だと思って、今からこの点に向き合ってみてはいかがでしょうか。

下記の図は会社設立(アーリーステージ)以降の事業拡大の方向と、それに伴い発生しやすい典型的な労務課題をまとめた図表です。

起業当初は業務委託を行うことも多いと思いますが、その場合でも労働法令は無視できません。また、事業拡大のタイミングで正社員を増やすと思いますが、その際に就業規則に不備があると、のちのち訴訟問題に発展する可能性もあります。最後に株式公開のタイミングで未払賃金の存在が発覚したり、過重労働やハラスメント問題が明るみに出ることもあるようです。

従って、ベンチャー企業経営者の皆さんは「まだ後回しで良い」といった認識を改めて、できる限り早い段階で労務管理へしっかりと取り組むことが大切なのです。

そのためには信頼できる弁護士や社労士に相談や指導を仰ぎなら就業規則や雇用条件契約書を制定し、管理体制を整えてゆくことが望まれますが、周囲に相談できる弁護士や社労士がいないという方も心配は無用です。

TECC(東京圏雇用労働相談センター)といった、労務管理に関する相談を無料で対応してくれる機関もありますので、相談できる社労士や弁護士が周囲にいないという方はそうした機関を活用すると良いでしょう。

次回は「弁護士が伝えておきたい、ベンチャー企業を取り巻く6つの労務リスクとは(仮)」についてご紹介致します。

TECC 相談院弁護士 倉持 麟太郎

TECC(東京圏国家戦略特区 東京圏雇用労働相談センター)とは

弁護士・社会保険労務士が常駐し、無料で雇用・労働に関する相談ができる公的機関。労働関係法令に関する相談はもちろん、具体的な雇用契約・就業規則の作成に関するアドバイスなど、具体的な相談も可能。これらのご相談は英語・中国語・韓国語でのご案内も可能。雇用や労働に関するセミナーも随時開催。

働く人、雇う人が、見えないトラブルでつまずく前の相談窓口として設立し、雇用の面からビジネスをサポートします。

TECC(東京圏国家戦略特区 東京圏雇用労働相談センター)
〒107-6006 東京都港区赤坂1-12-32 アーク森ビル 独立行政法人日本貿易振興機構(ジェトロ)本部7階
平日 9:00~18:00(祝日・年末年始除く)
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協力・監修:倉持 麟太郎弁護士弁護士法人Next所属、TECCの再受託者・相談員弁護士として活躍)