勤怠表とは？目的や作り方、Excelで勤怠管理するメリット・デメリットを解説

勤怠表（勤怠管理表）とは？

勤怠表は従業員の出退勤状況を正確に記録するための書類です。労働基準法第108条に基づく法的義務として作成が求められています。
※参考：労働基準法第108条｜e-Gov法令検索

勤怠表と勤務表の違い

勤怠表と勤務表は異なる目的で使用されます。勤怠表は実際の労働実績を記録する事後的な書類で、給与計算の根拠となります。一方で勤務表は予定されたシフトや勤務計画を示す事前の計画書類です。

両者を適切に区別して管理することで、計画と実績の差異を把握し、業務改善や労働時間管理に活用できます。

勤怠表に記載が必要な項目

勤怠表には従業員氏名、日付、出勤時刻、退勤時刻、休憩時間、実労働時間、時間外労働時間の記載が必要です。加えて有給休暇の取得状況や遅刻・早退の記録も含めることが一般的になります。
これらの項目を正確に記録することで、労働基準法に適合した適切な労務管理を実現できます。
※参考：労働基準法施行規則第54条｜e-Gov法令検索

勤怠表を作成する3つの目的

勤怠表を作成する目的は「労働時間の把握」「正確な給与計算」「法令順守」の3つです。これらを徹底することで、従業員の権利保護と企業の信頼性確保につながります。

1. 従業員の労働時間を把握するため

労働時間の正確な把握は労働基準法により使用者に課せられた重要な義務です。1日8時間、週40時間の法定労働時間を超過していないかを継続的に確認し、従業員の健康管理と法令順守を両立させる必要があります。

特に時間外労働については、36協定の範囲内であることを確認する重要な管理指標となります。

※参考：労働基準法第32条｜e-Gov法令検索
※参考：労働基準法第36条｜e-Gov法令検索
※参考：労働基準法第108条｜e-Gov法令検索

2. 正確な給与計算を行うため

勤怠記録は給与計算における最も基本的で重要なデータとなります。基本給に加えて残業代や深夜勤務手当、休日出勤手当の計算には正確な労働時間の把握が不可欠です。

計算に誤りが生じると従業員との信頼関係に影響を与え、未払い賃金となり法的問題に発展するリスクもあるため、慎重な管理が求められます。

※参考：労働基準法第24条｜e-Gov法令検索
※参考：労働基準法第37条｜e-Gov法令検索
※参考：労働基準法第108条｜e-Gov法令検索

3. 法令順守を徹底するため

労働基準法第109条により使用者は労働時間の記録を5年間保存する義務があります。労働基準監督署による調査や労働争議が発生した際に、適切な労務管理を行っていることを客観的に証明する重要な書類です。

法令順守の証拠として機能するだけでなく、企業の信頼性や社会的責任を示す重要な書類でもあります。

※参考：労働基準法第109条｜e-Gov法令検索

勤怠表の作成義務と保管期間

労働基準法に基づく勤怠表の作成義務と保管期間について解説します。

労働基準法で定められた管理義務

労働基準法第108条では使用者に対して労働時間、休日および深夜業に関する事項を記録する帳簿の作成義務を定めています。また、厚生労働省のガイドラインでは客観的な方法による労働時間の把握が求められており、タイムカードやICカードによる記録が推奨されています。
従業員の自己申告のみでは法的要件を満たしません。

※参考：労働基準法第108条｜e-Gov法令検索
※参考：労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン ｜厚生労働省

保管期間と違反時の罰則

労働基準法第109条により労働関係書類は5年間の保存が義務付けられており、勤怠表も対象となります。保存義務に違反した場合は30万円以下の罰金が科される可能性があります。

デジタルデータでの保存も法的に認められているため紙媒体にこだわる必要はありませんが、改ざんや消失を防ぐ適切なセキュリティ対策が必要です。

※参考：労働基準法第109条｜e-Gov法令検索
※参考：労働基準法第120条｜e-Gov法令検索

勤怠表の作り方

勤怠表の作成方法には企業の規模や予算に応じて複数の選択肢があります。それぞれの特徴を理解して最適な方法を選択しましょう。

Excelで作成する方法

Excelで勤怠表をゼロから作成する場合、TIME関数やSUM関数、IF関数を組み合わせて労働時間を自動計算する仕組みを構築します。出勤・退勤時刻の入力欄を設定し、休憩時間を差し引いた実労働時間を算出する計算式を作成することで効率的な管理が可能です。
データの入力規則やプルダウンメニューを活用することで入力ミスを防ぎ、既存の給与計算システムとの連携も考慮した設計ができます。

※関連記事：無料エクセルテンプレートでタイムカード集計！エクセル勤怠管理の注意点や課題を紹介！
※関連記事：Excelで勤怠管理をする方法は？メリットや注意点について解説

勤怠管理システムを使う方法

専用の勤怠管理システムを導入することで、より高度で包括的な労務管理を実現できます。クラウド型システムであれば初期費用を抑えながら運用でき、法改正への自動対応や複雑な勤務形態への柔軟な対応が可能です。
また、リアルタイムでの勤怠状況把握や承認ワークフローの自動化など、業務効率向上につながる機能が充実しています。

※関連記事：勤怠管理システムのおすすめ26選｜導入メリットや選び方を解説

Excelで勤怠管理をするメリット

Excel活用による勤怠管理には、特に中小企業にとって魅力的なメリットがあります。具体的には以下の通りです。

コストがかからない

Microsoft Officeがすでに導入されている企業であれば、追加のライセンス費用や初期投資なしで勤怠管理を開始できます。専用システムと比較して初期費用と運用費用を大幅に削減でき、特に予算に制約のある小規模企業にとって有効な選択肢となります。

また、既存のパソコン環境とソフトウェアをそのまま活用できるため、新たなハードウェア投資も不要です。

カスタマイズしやすい

Excelの高い柔軟性により企業固有の勤務形態や就業規則に合わせたカスタマイズが容易に実現できます。変則的なシフト制や複雑な手当計算ルール、業界特有の勤務パターンにも対応でき、企業の成長や制度変更に応じた修正も比較的簡単に行えます。

また、IT専門部門がない企業でも基本的なExcelスキルがあれば、改修や機能追加を内製で対応できます。

テンプレートの利用で導入がしやすい

インターネット上には勤怠管理用のExcelテンプレートが豊富に公開されており、ゼロからシステムを構築する必要がありません。基本機能を備えたテンプレートを企業要件に合わせて調整するだけで、短期間での運用を開始できます。

労働基準法に準拠した計算式が組み込まれているテンプレートも多く、法的要件を満たしながら効率的な導入を実現できます。

Excelで勤怠管理をするデメリット

Excel管理には運用上注意すべき課題も存在します。これらのデメリットを事前に理解しておくことが重要です。

計算式を間違える可能性がある

Excel関数の設定ミスや論理エラーにより給与計算に重大な誤りが生じるリスクが存在します。複雑な勤務形態や時間外労働の計算では、複数の関数を組み合わせた複雑な計算式が必要になるため、設定ミスが発生しやすくなります。

誤った計算が長期間継続される可能性があり、後から発覚した場合は大規模な給与修正が必要になることもあるでしょう。

勤務実績の改ざんリスクがある

Excelファイルは比較的容易に編集可能で、悪意のある第三者による不正な時刻修正や勤務実績の改ざんが発生するリスクがあります。ファイルの編集履歴や変更者の追跡機能が限定的であるため、完全な変更履歴の把握が困難です。

なお、Excelによる勤怠管理は労働基準監督署の調査時に客観的で信頼性のある記録として認められない場合もあり、適切なセキュリティ対策の構築が不可欠です。

法改正毎にアップデートが必要となる

労働基準法の改正や社会保険制度の変更に伴い、計算式や管理項目の継続的な見直しと更新作業が必要です。専用システムではベンダーが自動的にアップデートを提供しますが、Excelでは企業が独自に手動での修正作業を行う必要があります。
法改正への対応が遅れると法令違反のリスクが高まるため、継続的なメンテナンス体制の確立が重要です。

Excelによる勤怠管理が向いている企業

Excelによる勤怠管理は、以下の特徴に該当する企業にとって効果的な選択肢です。自社の特徴を理解して適用を検討しましょう。

小規模の企業

従業員数が少ない小規模企業では、複雑な部門別管理や多層的な承認フローが不要であり、Excelの基本機能で十分対応できます。全従業員の勤怠状況を単一のファイルで一元管理でき、人事担当者の管理負担も軽減されます。

また、将来的な事業拡大に応じて専用システムへの移行も段階的に検討しやすく、成長段階に応じたシステム選択の自由度が高い点も魅力です。

Excelが得意な人がいる場合

Excelに精通した従業員がいる場合も、Excelによる勤怠管理が効果的です。関数や数式を適切に組み合わせることで、残業時間の自動計算や有給取得日数の管理といった複雑な処理も正確に実行できます。

さらに、法改正があった際の修正作業や、新しい勤務形態に対応したカスタマイズも行えます。トラブルが発生した場合でも社内で対応できるため、外部への依頼コストを削減しながら効率的な勤怠管理を継続できるでしょう。

まとめ

勤怠表は労働基準法で義務付けられた重要な労務管理ツールであり、正確な給与計算と継続的な法令順守において欠かすことができません。

Excel活用による勤怠管理は、初期費用の削減とカスタマイズの自由度の高さというメリットがある一方で、計算ミスのリスクや改ざんの可能性、法改正への対応負担といった重要なデメリットも存在します。こうしたデメリットを解消する方法として注目されているのが、勤怠管理システムです。

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