有給休暇の金額が「6割」といわれるのはなぜ?平均賃金の計算方法と休業手当との違い
タッチオンタイムの紹介
公開日:2026年10月29日
こんにちは。シェアNo.1クラウド勤怠管理システム「タッチオンタイム」のコラムチームです。
有給休暇の給与計算は複雑です。平均賃金方式の職場やパート従業員が多い現場では、「なぜ6割しか支払われないのか」と問い合わせを受けることもあり、手作業での集計は労務負担にもなります。
本記事では、有休の金額が6割になる理由や正確な算出手順、法的な注意点を分かりやすく解説します。
- 有給休暇の支給額が「6割」といわれる理由と平均賃金の仕組み
- 給与計算に用いられる3つの方式と具体的な計算手順
- 休業手当との違いや有休取得時の各種手当の取り扱い
- 有給休暇の6割支給が違法になるケースと注意点
目次
有給休暇の金額が6割になる場合のおもな理由
有給休暇の金額として語られる「6割」には複数の由来があります。ここでは給与が通常勤務時より目減りする理由と、6割という数字が生まれる仕組みを解説します。
会社が平均賃金方式を選んでいるため
労働基準法で認められている有給休暇の計算方法のうち、平均賃金方式を就業規則で定めている場合、給与が通常よりも少なくなります。
平均賃金方式では計算の仕組み上、1日あたりの支給単価が低くなるため、有給取得日の給与は普段の7割前後にとどまるケースが多くなります。さらに時給制や日給制の従業員では、後述する最低保障額の計算により、支給額が6割前後になる場合もあります。
平均賃金は過去の実績から算出するため
平均賃金方式では、直近3か月の賃金総額を労働日数ではなく、休日を含めた暦日数で割って単価を計算します。分母に休日が含まれるため、単価は低くなります。
月平均の所定労働日数が20日から21日程度であるのに対し、暦日数は約30日となるため、支給額は通常の日給を下回るのが特徴です(賃金の構成や月によって異なりますが、目安として7割程度になることもあります)。
支給割合そのものを6割に引き下げているわけではない点に注意が必要です。
※参考:厚生労働省 神奈川労働局 平均賃金について【賃金室】
パートや時給制は最低保障額の6割が基準になるため
賃金が時間額や日額、出来高払制で定められている従業員は、月によって労働日数や賃金が変動します。出勤日数が少ない月があると、暦日数で割る原則の計算式では平均賃金が極端に低くなるため、労働基準法は「賃金総額÷労働日数×60%」という最低保障額を定めています。
実務では原則の計算式で出た金額と最低保障額を比べ、高いほうを平均賃金として採用します。有給休暇の金額が6割といわれることがある背景には、この最低保障額の60%という数字があります。
有給休暇の給料を計算する3つの方法
有給休暇の給与計算には、法律で定められた3つの方法があります。
通常どおり働いたとみなして払う方式
実務上もっとも一般的で、計算も容易なのが「通常の労働時間を労働した場合に支払われる通常の賃金」を支給する方式です。有休を取得しても普段どおりに働いたものとみなし、給与を計算します。給与計算がシンプルで担当者の負担が少なく、従業員にも収入減が生じないため、有休取得を促進しやすい点がメリットです。
直近3か月の実績から払う方式
平均賃金方式は、直近3か月の賃金総額を対象期間の暦日数で割って1日あたりの金額を割り出す方法です。分母に休日が含まれるため支給単価は下がる場合が多いものの、残業代や手当が多く支給された月の直後は単価が上がります。毎月給与が変動する歩合制などの従業員に対して、実績を反映させて支払いたい企業に適しています。
標準報酬月額の日額をもとに払う方式
健康保険の標準報酬月額を30日で割った日割り額を、有給休暇の給与として支給する方式です。標準報酬月額とは、社会保険料を計算する際に用いられる基準額を指します。計算上限額が設定されているため、給与が高い従業員に支給する場合は不利になるケースがあります。就業規則の記載だけでは運用できない点に注意が必要です。
平均賃金を算出する具体的な手順

平均賃金方式で有休給与を支払う場合の具体的な手順をまとめます。
直近3か月の総支給額と日数を出す
平均賃金を計算するには、まず直近3か月に支払われた賃金総額と暦日数を集計します。起算日は有休取得日ではなく直前の賃金締切日とします。賃金総額には基本給のほか、通勤手当や残業代などの各種手当も含めて計算します。ただし、結婚手当など臨時に支払われた賃金や、3か月を超える期間ごとに支払われる賞与については計算対象外です。
※参考:厚生労働省 神奈川労働局 平均賃金について【賃金室】
原則の計算式で1日分を割り出す
賃金の集計が終わったら、「直近3か月の賃金総額÷直近3か月の暦日数」で1日あたりの平均賃金を算出します。暦日数には土日祝日などの休日が含まれる点に注意が必要です。この式で算出した金額に銭未満(小数点以下第3位以下)の端数が出た場合は、切り捨てて処理するのが一般的です。有休を取得するたびに計算し直さなければなりません。
※参考:厚生労働省 神奈川労働局 平均賃金について【賃金室】
最低保障額を計算して原則と比較する
賃金が時間額や日額、出来高払制で定められている従業員の場合、原則の計算では平均賃金が低くなる問題があります。これを防ぐため、直近3か月の賃金総額÷直近3か月の労働日数×60%という最低保障額が設けられています。実務では、原則の計算式で出た金額とこの最低保障額とを比較し、金額が高い方を採用しなければなりません。
休業手当と有給休暇の6割の違い
有給休暇の6割と混同されるのが、休業手当の6割です。両者の違いについてまとめました。
会社都合の休業で払う休業手当とは
休業手当は、業績悪化や工場の設備不良など「使用者の責に帰すべき事由」によって従業員を休業させた際に支払う手当です。
労働基準法により、会社は労働者の生活を保障するため、平均賃金の6割以上の休業手当を支払う義務があります。この「6割以上」という数字が、有休の支給額減少と混同されやすいおもな原因です。
休業手当と有給休暇の計算方法の違い
休業手当は「平均賃金の6割以上」を支払うのに対し、平均賃金方式の有給休暇は「平均賃金の100%」を支払います。有休取得時に通常の給与より少なくなるのは、平均賃金の算出時に分母に休日を含めるためであり、支給割合を6割に下げているわけではありません。
※参考:労働基準法・第三十九条(年次有給休暇)|e-GOV/労働基準法・第二十六条(休業手当)|e-GOV
目的と権利の観点から見る両者の違い
有給休暇は、労働者の疲労回復を目的として与えられる権利です。従業員が希望する日に休め、賃金が保障されます。対して休業手当は、働く意思があるのに会社都合で働けない状態への生活保障であり、労働者は休む日を選べません。取得の主体が従業員か会社かという点で、制度の性質や法的根拠が異なります。
有給休暇の給与計算で各手当はどう扱うか
有給休暇の給与計算における各手当の扱いについて解説します。
通勤手当の定額と実費による違い
通勤手当を有休の給与計算に含めるかは支給方法次第です。定期券代などを毎月定額で支給している場合、有休を取得しても減額せず、全額支給するのが一般的です。一方、出勤日数に応じて実費を支給している場合は、有給休暇の日は実際の通勤交通費が発生していないため、支給対象から除外して処理するケースもあるでしょう。
家族手当や住宅手当の除外ルール
家族手当や住宅手当のように、実際の労働ではなく従業員の生活状況に応じて毎月定額で支給される手当は、有給休暇を取得した日も通常どおり全額を支給しなければなりません。また、平均賃金を算出して有休給与を決める場合、これらの定額手当は直近3か月の賃金総額に含めます。法律上、計算から除外できる手当には該当しません。
※参考:厚生労働省 神奈川労働局 平均賃金について【賃金室】
皆勤手当を減額・控除する場合の注意点
無遅刻無欠勤を条件とする皆勤手当で、有給休暇の取得を欠勤扱いとして減額または不支給とする運用には注意が必要です。労働基準法附則第136条は有休取得者への不利益な取り扱いをしないよう定めており、厚生労働省は訓示規定と説明しています。
ただし最高裁は、減額の程度によっては有休の取得を事実上抑制するとして、公序良俗に反し民事上無効になると判断しています。実務上は、有休取得日を出勤扱いとする運用が安全です。
※参考:年次有給休暇をとると査定でマイナス評価にされるのは、問題でしょうか?|確かめよう労働条件(厚生労働省)
※参考:年次有給休暇 裁判例(沼津交通事件)|確かめよう労働条件(厚生労働省)
深夜手当や残業代を計算に含めるかの判断
通常の賃金方式で有休給与を支払う場合、その日に残業や深夜勤務の予定があったとしても時間外手当や深夜手当を支払う必要はありません。あくまで所定労働時間を働いたとみなして基本給を支払います。一方、平均賃金方式を採用している場合は、過去3か月の賃金総額に実績として支払われた時間外手当を含めて計算しなければなりません。
有給休暇の6割支給が違法になる4つの例
有給休暇の6割支給が違法になるケースについて解説します。
休業手当と混同して平均賃金の6割しか払わない
平均賃金方式では、有給休暇の日に支払う金額は平均賃金の全額です。休業手当の「平均賃金の6割以上」という乗率を当てはめ、6割しか支給していないケースは労働基準法違反にあたります。有給休暇の賃金は同法第39条第9項、休業手当は第26条と根拠条文が異なるため、給与規程で明確に分けて定める必要があります。
※参考:労働基準法・第三十九条(年次有給休暇)|e-GOV/労働基準法・第二十六条(休業手当)|e-GOV
時給や日給が最低賃金を下回っている
有給休暇の計算のもとになる時給や日給が地域別最低賃金を下回る場合は、最低賃金法違反となります。最低賃金は実際に労働した時間の賃金を時間額に換算して比較する仕組みで、精皆勤手当や通勤手当、家族手当、割増賃金は対象外です。基礎となる時給や日給が最低賃金額を満たしているか確認が必要です。
就業規則に定めがないまま会社が減額する
有給休暇の賃金をどの方式で支払うかは、平均賃金と通常の賃金のいずれを採用する場合も、あらかじめ就業規則その他これに準ずるもので定めなければなりません。標準報酬月額を用いる方式は、就業規則の定めだけでは足りず、労使協定の締結が必要です。
定めがないまま会社の判断で計算方法を都度変えたり、規定した方式より低い金額を支払ったりすることは認められません。
有給休暇の取得を理由に賞与を減額する
有休を取得した日数分だけ賞与の査定を下げる運用は、取得を事実上抑制するため、労働基準法附則第136条が定める不利益な取り扱いに当たります。同条に直接の罰則はありませんが、減額の程度によっては公序良俗に反し、民事上無効と判断される場合があります。賞与の算定で出勤率を用いる場合は、有給休暇を取得した日を出勤したものとして扱うことが望ましいといえます。
まとめ
平均賃金方式は暦日数で割るため支給額が通常の日給より低くなり、時給制は最低保障額の6割が基準になることもありますが、違法ではありません。
平均賃金方式を採用している場合は、原則として有給休暇を取得した日以前3か月間の賃金を基に算定します。算定期間中の賃金や勤務実績によっては、取得時期により支給額が変動することがあるため、手作業の計算はミスを招きやすい点に注意が必要です。
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- この記事の執筆者
- 株式会社デジジャパン「タッチオンタイム」コラムチーム
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